2010年7月11日日曜日

スペイン、オランダから学ぶ事。

W杯今大会で決勝に進んだスペインとオランダは、相手の攻撃を受けてから動くリアクションサッカーではなく、自らアクションを起こして「自分達のサッカー」で戦うチームだと言われる。

そして、「だから彼らの戦術を手本にしてパスサッカーやポゼッションサッカーを目指すべき」と多くの国やクラブの監督、首脳が言う。

2つとも正しい意見だと思う。


ただし、スペインやオランダの戦術をコピーすれば強く、美しく、面白いサッカーが出来るようになるかといえば、それは違うと思う。


スペイン、オランダのサッカーが他のチームと違うところは、戦術ではない。

ボールをしっかり止める技術だ。


例えば、相手のバイタルエリアで、パスを受ける味方選手が相手に厳しくマークされていても、数的不利に立たされていても、彼らはそこに普通に、なにげなくパスを出し、そのパスを貰う選手は、自分の間合いでボールコントロールできる場所にピタリとボールを止める。
それによってワンタッチ、ツータッチで、またさらにサイドにパスを出したり、ミドルを狙う選手にボールを落とすことができる。

「リスクを犯して攻める」という言い方があるけど、彼らにとってその一連のプレーは、決してリスクの高いプレーではないのだと思う。

しっかりボールを止めることのできないチームにおいてはハイリスクなプレーでも、ピタリと止める技術があるチームにとってはそのリスクが大幅に軽減される。



現代サッカーは、攻撃的であれ守備的であれ、ポゼッションサッカーであれカウンターサッカーであれ、「トータルフットボール」を基本としている。
それぞれの戦い方に違いが生まれるのは、単にチームが抱える選手の能力の違いや特徴が違うからであって、それによって選べる戦術の選択肢が限られているからに過ぎない。

スペインやオランダは、パワープレーや肉弾戦よりも、ボールコントロールで勝負するのが得意。
ボールをしっかり止める技術、正確にパスを出せる技術、そういった基本技術が高いレベルにあるからだ。もちろん相手より体格やパワーで勝る場合はそれを有効利用した戦い方を選ぶこともできるから、パスサッカーの他に戦術の幅が広がる。

審判のジャッジが、身体の激しい当たりや、背後からのファウルを厳しくとる傾向に進みつつある現代サッカーにおいては、ワンタッチ、ツータッチでパスを繋ぎ、それによって相手への身体の接触が減るサッカーのほうが有利にプレーすることができることも、パスサッカー隆盛の一因。
だからパスサッカーの未来は明るい、と考えることに間違いはない。


ただしやはり、いくらパスサッカーが強いといっても、止める、蹴る、の基本技術がしっかりした国やクラブが勝つことに変わりはない。

つまり、スペインやオランダから学ぶべきはパスサッカーという戦術よりも、まず、しっかり止める、蹴る、といった基本技術のほうなのだ。



小野伸二がオランダのフェイエノールトでプレーしていた時、監督は現オランダ代表監督のファンマルバイクだった。

トリッキーなテクニックを使ってプレーする小野に、ファンマルバイクが「サーカスプレーはいらない」と注意したというエピソードがある。

小野は日本サッカー史上、正確にボールを止める技術が最も高い選手だと思う。フェイエのチームメイトからも「チームで小野が一番うまい」「オランダ代表の誰よりもうまい」という声も多くあった。
それくらい技術の高い小野であってもファンマルバイクは「もっと正確にプレーしろ」と要求した。

そしてオランダやドイツのサッカーを経験して日本に戻ってきた小野は、口癖のように「しっかりボールを止めて蹴ること」の重要性を説くようになった。

このファンマルバイクが小野に要求した理念は、現オランダ代表の躍進に大きく関係していると思う。

フェイエやファンマルバイクの理念というより、オランダの理念なのだ。

かつて日本代表や磐田、浦和などで指揮をとったオフト監督も同じオランダ人で、同じ理念の持ち主だった。
浦和では前掛かりな攻撃的サッカーや美しさや華やかさを選ばず、「追い越し禁止」などの制限を設けて、まずしっかりパスを繋ぎ、正確にプレーすることを教えた。

W杯今大会のオランダ代表には「勝ってはいるけど美しさ、華やかさが足りない」という意見もある。
ではオランダらしくない試合をしているのだろうか?それは違う。しっかりボールを止めて蹴り、正確にプレーするというオランダの理念が強く息づく、オランダらしいチームだ。


日本や浦和が学ぶべきことは、戦術のうわべの美しさではなく、まずその基礎、基本理念だと思う。
それを学び取り、身に着けることができなければ、パスサッカーで強くなることはできない。

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